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1 日時
令和8年3月6日(金)14時00分から15時45分まで
2 場所
出入国在留管理庁応接室
3 対象者
関西学院大学 国連・外交統括センター 教授 村田俊一 氏
4 対応者
出入国在留管理庁政策課外国人施策推進室 山口補佐官 ほか
5 内容
(外国人受入れに係るコストとペースについて)
○ 外国人の受入れに当たっては、受入れ側のキャパシティのアセスメントと
いうのが今はどこもぼんやりしている。経済規模が大きく、体力のある自治体
については、放置していてもおそらく順調に回っていくのだろうが、地方部に
おいて、若者が流出していく自治体についてはそのキャパシティが検討され
ないまま受入れが進み、結果として悪い方向にいくことがある。それは言語の
壁の問題ではなく、受入れの戦略や出口について、共通認識を持たないまま、
受け入れられるだけ受け入れることによって生じる問題である。
○ 最近、オランダの外国人の社会的負担に関する論文1が話題になったが、日
本の新聞や学術雑誌も、ほとんど外国人の受入れに係るコストに関すること
は取り上げない。経済用語で、トランザクションコストとリカレントコストが
ある。トランザクションコストは初期費用のことであって、外国人を受け入れ
る初期段階の言語トレーニングや官公庁で対応する職員の人件費、行政サー
ビスに係るコストのことである。そういったものは基本的に計算できる。それ
を計算しておかなければ、受入れ体制の整備にあたって財政的な要求ができ
なくなる。
○ 現行の外国人政策は個々の要望に基づいた政策となっており、全体的な戦
略の出口が不透明である。日本に限らず、外国人が自国民と比べて社会的なコ
ストが高くなるのはどの国でも同じである。企業、監理団体や地方自治体も、
どのような受入れの在り方であればコストパフォーマンスが良いのかという
指標は必要だ。
○ 外国人の受入れは、ペース配分を間違えると、どんなに素晴らしい政策でも
1”The Long-Term Fiscal Impact of Immigrants in the Netherlands, Differentiated by Motive,
Source Region and Generation”, IZA Institute of Labor Economics, December 2024
1
失敗する。開発という観点からみると、人間が移動し、その場所で落ち着くま
でには時間がかかる。落ち着くまでの時間も地域差が大きく、若者が多く経済
規模の大きい都市においては、そのペースは速くなるのだろう。キャパシティ
アセスメントを考慮しながらも、最も重要なのはペース配分なので、受入れを
する企業や自治体に対しての政府の指導や誘導が必要になる。ただ労働市場
のニーズがあるから、人手不足で困っているからという理由だけで受け入れ
るのではなくて、果たしてその状況に対応できる体力はあるのかを念入りに
検討しなければならない。外国人受入れのニーズの高い企業や地域はその思
いばかりが先走って、抑えが効かなくなるということが起こりかねない。
(受入れと統合のバランスについて)
○ 受入れと統合のバランスがうまくとれた成功例は、浜松市である。浜松市で
は外国人を住民として位置付けると、日本語教育、就学支援を制度化し、定住
化を実現している。浜松市における産業と、労働経済におけるニーズと、需要
と供給が合致してコミュニティが形成された。
○ 一方で、企業任せによる大量受入れを行った地域については、失敗例として、
その地域では外国人と日本人とで摩擦が起こったり、失踪が多発したりする。
受入れの質を検討するに当たっては、就労能力と生活統合能力を評価すべき
で、頭数の検討だけでは拙速だということである。また、人は移動するもので
あるから、例えば浜松市で就職した人がずっとそこで暮らすかどうかは分か
らない。自治体にもトラックレコードはなく、その人が離れてしまえばその後
は関与しない。管理をする上では、就労している人、永住している人、そうい
う人たちのトラッキングが必要になるのではと思う。
○ また、短期の労働力受入れで地域が疲弊してしまうことがある。労働力が欲
しくて外国人を受け入れても、当然機械ではなく一人の人間であるから、労働
を提供してもらってそれで終わりというわけにはいかない。日本社会にうま
く馴染めなかったり、頼れる人が周りにおらず孤立してしまったり、そういう
状況が短期的に頻発すると失踪につながる。外国人の受入れは地域再生の政
策の一部であるということを再認識しなければならない。
(キャパシティアセスメントについて)
○ いわゆる予防的措置というのは大変重要なことなのだが、政治の世界では
あまり重要視されない。価値のあることだと分かっていても、やっていて華が
ないからである。逆に華があるといえば問題処理能力で、問題が沸き起こった
時にどう対処するのかというところは皆熱心に取り組む。最も大切なのは問
題が起こって、どう解決したかという能力のキャパシティアセスメントであ
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る。問題に対処するには、将来的にこういう問題が起こるだろうと予測ができ
る能力をキャパシティアセスメントの中に取り入れることが必要だ。基本的
に、人間は問題が顕在化するまで何も対処しない。予測能力と問題処理能力を
組み込んで考えていなければ、問題の処理が追い付かなくなる。また、問題処
理能力は定量化できる。一つの問題にどれだけの人が関わって、どういう問題
を解決したかということ。処理の複雑性にもよるが、処理のスピードも定量化
できるものである。
(受入れの質について)
○ 2016 年に書かれたオランダの論文では、移民受入れに係る社会的負担が中
心に述べられている。日本人の中には、この論文を外国人の受入れをシャット
アウトする意図で使おうとする人もいて、それは非常に危険なことである。こ
の論文において重要なところは、日本語教育などの教育をして、そのトレーニ
ングを受けた後のリターンである。良い教育を受けることはもちろん良いこ
とだが、教育を受けた後の個々人がどういう風に社会に貢献していくのかと
いうことである。
○ 最も良いのは、日本で素晴らしい教育を受け、日本のために貢献したいと考
えること。一方で悪いのは、不当な扱いを受けて日本に対してネガティブな感
情になること。外国人に関して言えば、最終的には良い仕事に就けて、生活に
満足し、どんどん働いていこうという気持ちになることが、最終的には受けた
教育に対するリターンとなる。それが外国人の社会貢献、企業への貢献にも繋
がっていく。その意味では、特定の地域や特定の在留資格のリターン率が非常
に低いということになってくると、やはり社会負担に係るコストパフォーマ
ンスは考慮しなければならない。受入れの人数中心の議論ではなく、質の問題
となってくる。
○ 受入れの質に関しては、受け入れる前段階で、オンラインで精査する必要が
あると思う。日本語のレベルや日本の文化、そして少なくとも自分がこれから
する仕事や受ける予定の教育に関して、しっかり説明ができること。そのよう
なスクリーニングは今あまりされていない状況で、全て事後対応になってい
るので受入れ後のコストが高くなっている。予防措置として、日本にこれから
入国しようという人たちには、言語と文化、それから自分の将来というのを説
明できるようなパッケージでスクリーニングをすると、行政の負担はずっと
軽くなると思う。
○ 一律にテストを設けると近隣諸国に人材を取られてしまうのではないかと
いう懸念もあるかも知れない。では結局、日本はどういう人材が欲しいのか。
特定技能が欲しいのか、技能実習が欲しいのか、高度人材が欲しいのか、そこ
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にカテゴリーがあるとするならば、優先順位はつけないといけない。
○ 大学の中にも何をしているかよく分からないような学生がいて、問題を起
こし、トランザクションコスト、リカレントコストが高くなるような人もいる。
政府は、皆さん平等に大切ですよと言わなければならないが、お金のかかるこ
とには優先順位をつけなければならない。そのような中、オランダの論文では
低賃金構造を前提とした外国人の受入れは国家体制を弱体化させると結論付
けられた。働いてくれるが、社会負担が大きいのだと。それがオランダのレッ
スンだったということである。
○ もちろん受入れは良いのだが、それに係るコストをきちんと計算しなけれ
ば予算の見積りができない。外国人一人あたりのコストを計算して国際比較
してみると、日本はかなり高い水準にある。例えばカナダは永住することが前
提で統合支援を充実させているが、外国人一人あたりのコストはかなり低く
なっている。支援を充実させればコストは高くなるような気もするが、カナダ
は移民を所管する省庁のコマンドラインがはっきりしていて、それによって
コストが抑えられている。日本は多重構造で、日本語だけでも外務省、文科省
がやっていたりする。複数の省庁が同じようなことをしていたり、どこで何を
扱っているのか分からなかったりという状態になっているために、コストが
高くなる傾向がある。ドイツはそういう痛い経験があるから、一つに統合して
いる。その辺りをはっきりさせることは重要で、それだけでコストは削られて
いくのだと思う。現在の日本政府の抱える課題であると思う。外国人の受入れ
は単なる労働力の確保ではなく、社会統合、地域再生、教育、行政コストを含
むものと捉えなければならない。
(日本人と外国人の交流について)
○ 今は東京に一極集中しているが、本当に私が願っているのは、地方創生にお
いて、海外就労も大事だが、若者が地方に定着し、そこで日本に働きに来た外
国人と交流してその地域に根付くような方程式を組むことができないかと考
えている。都会ではいろいろな外国人コミュニティがあるが、本当に人に来て
ほしいニーズの高い田舎の、へき地のような地域への人の展開をどういうふ
うに持っていくかというのが、今後の大きな悩みになるだろう。
○ 日本人は、特に東南アジアから来ている人に対して出稼ぎというイメージ
をもっている。私たちはどうしても偏見を持ちがちだが、日常生活をよく見る
と、日本は相当途上国からのサポートを受けて、これまで日本が行ってきた外
交努力の恩恵を受けて毎日暮らしているということをひしひしと感じる。今
の若い人たちは、そういうことを教わる機会が少ないのではないか。それは
我々大人が教えるしかないのだが、これから国内の国際化問題に目を向ける
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となると、私たちが普段の生活の中でどれほど彼らの国に依存しているかと
いう観点から、少しずつ価値観をアップデートしてもらいたいと思う。道徳的
にも心情的にも、とても大切なことだと思う。